
生産技術の仕事は激務だ
もしあなたが現職の生産技術者なら、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
- 鳴り止まない電話、終わらない調整業務
- 深夜や休日のトラブル対応
- 大型連休は、決まって大規模工事
- なぜか自分のタスクだけが増えていく…
「自分の働き方は、もしかして異常なのだろうか?」「このままこの仕事を続けて、心と体は大丈夫だろうか?」
結論から言うと、生産技術は構造的に激務になりやすい職種です。私も新ライン立ち上げ時は、残業時間100時間ほどありました。
しかし、すべての生産技術者が疲弊しているわけではなく、やりがいを持って働いている人も大勢います。
この記事では、現職の生産技術者である私が、なぜこの仕事が激務になりがちなのか、その5つの根本的な理由を深掘りします。
さらに、具体的な激務回避策から、それでも限界を感じたときの「環境を変える」という最終手段まで、あなたの心と身体を守るための指針になる記事です。
激務により心身ともに、不健康では本末転倒です。ライフワークとのバランスも考えよう。
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【激務?】生産技術である私のリアルな残業時間
生産技術で7年ほど働いてきた私の残業時間は下記の通りです。
| 通常 | ピーク | 新ライン立ち上げ時 | |
|---|---|---|---|
| 残業時間 | 30時間 | 40時間 | 70〜80時間 |
| 土日出勤 | 1回/月 | 3〜4回/月 | ほぼ毎週 |
| 出張 | 0回/月 | 3回/月 | 常駐(ホテル通い) |
立ち上げ時には、納期やに拘束があるため、残業時間が大きくなりがちでした。しかし、今は違う方向でブラックさがあります。それは法的な残業時間の制約です。
法的に残業時間が縛られる中で、会社としても働き方改革の一環でより残業を厳しく管理するようになりました。
残業の管理が厳しくなったことで、残業したくても残業できない。けど仕事は積み上がって行くというジレンマを抱えながら仕事をすることが少なくありません。
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間と定められています。
引用:厚生労働省HP
私の会社全体での残業平均時間は減少傾向なのですが、生産技術は増加しているというのが私の現実です。
【参考】他職種の残業と生産技術の比較
転職サイトdodaが15,000人を対象に実施した残業時間調査のデータです。生産技術を含む「モノづくり系エンジニア」の職種別残業時間を見てみましょう。
| 職種 | 組み込み エンジニア | 機械設計 金型設計 光学設計 | 回路設計 | 技術営業(FAE) | 評価 実験 デバッグ | 生産技術 | 品質管理 品質保証 | 整備士 サービスエンジニア | 一般事務 | 医療事務 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 残業時間 | 29.3 時間 | 28.8 時間 | 27.2 時間 | 25.8 時間 | 25.2 時間 | 22.6 時間 | 20.1 時間 | 18.6 時間 | 11.0 時間 | 10.5 時間 |
これはあくまで「平均」の話。繁忙期や企業規模によって、実態は大きく異なります。
参考程度にして見てみてください
生産技術が激務になりやすい理由5選
なぜ生産技術という仕事は、これほどまでに激務になりがちなのでしょうか。それは個人の能力や頑張りだけでは解決できない、構造的な問題を抱えているからです。
もちろん企業や担当製品によって状況は異なりますが、構造的にどうしても「激務」になりやすい要因がこの職種には潜んでいます。
- 設備を止めないと仕事ができない
- 業務範囲が広すぎて「便利屋」
- 慢性的な人手不足と業務の「属人化」
- 各部署の「板挟み」になる調整業務
- 予測不能な「突発イベント」の連続
設備を止めないと仕事ができない(残業や夜勤)
生産技術の主な仕事は、工場が安定して動き続けるための「仕組み」を作ることです。そして、その仕事の多くは、生産ライン=設備に直接関わります。
しかし、当たり前ですが、生産中は設備を止めることはできません。結果として、私たちの仕事は、ラインが止まる夜間や休日、そして世間が休む大型連休に集中します。
世間が休んでいる時にこそ、大規模な搬入や据付工事が待っているのです。
- 製造現場の残業がある日は、残業後でしか設備を触れず、21時からの作業と終電のせめぎ合いで、ストレスになることが多々ありました。
- 各拠点工場の設備が同じタイミングで故障してしまい、隔週末で拠点出張をするなどもあります。
さらに、海外工場の立ち上げやトラブル対応での急な出張、24時間稼働工場での夜間呼び出しなど、プライベートの予定などお構いなしに現場が優先される文化があります。
これが、生産技術がプライベートを犠牲にしやすい、根本的な原因です。
業務範囲が広く便利屋になりやすい
「技術のことなら、とりあえず生技に聞け」あなたの職場にも、そんな風潮はありませんか?
生産技術の業務範囲は、本来「生産プロセスの設計・改善・設備導入」等であるはずです。しかし、現実には、
- 設備の簡単な修理(保全の領域)
- 作業手順書の作成(製造の領域)
- 治具の設計・手配
- 果ては、工場の蛍光灯交換やPCのトラブル対応まで…
といった、専門外の雑務まで「なんでも屋」のように押し付けられがちです。
小さい会社などは「保全チーム」がないことも多いため、生産技術として全て見ることも多いです。
一つ一つは小さな仕事でも、積み重なれば膨大な時間となり、本来やるべきコア業務を圧迫します。これが、慢性的な長時間労働に繋がるのです。
真面目な人ほど「自分がやった方が早い」と引き受けてしまいがちですが、これら雑務の積み重ねが本来の改善業務んなどを圧迫し、結果として長時間労働を招く負のスパイラルに陥ります。
業務範囲の境界線が曖昧なことが、激務の温床となっているのです。
私も事務用のPCのプリンターが使えないからという理由で呼ばれ、ドライバーを探すところからインストールするところまで全てやったことがあります。
慢性的な人手不足と業務の「属人化」
多くの製造業では、利益を直接生まない間接部門の人員は、常に最小限に抑えられる傾向があります。
特に生産技術は、一人で複数の生産ラインや工場を担当することも珍しくありません。その結果、特定の人物しか分からない業務、いわゆる「属人化」が深刻な問題となります。
- 「この設備トラブルは、〇〇さんしか直せない」
- 「あのラインのことは、△△さんじゃないと分からない」
こうなると、担当者は休みの日でも電話が鳴り、常に仕事から解放されません。そして、その人が倒れたり、辞めてしまったりすると、現場は大混乱に陥ります。
私の会社でも、開発部門には新入社員が多く配属されますが、生産技術には1人も入らない年も少なくありません。
各部署の「板挟み」になる調整業務
生産技術は、工場のハブ的な立ち位置にいるため、各部署からの要望が集中しがちです。
- 設計
「この新製品、なんとか作れるようにしてくれ」 - 製造
「もっと楽に、安全に作れるように改善してくれ」 - 品質保証
「不良品が出ないように、工程能力を上げてくれ」 - 営業
「顧客から急な増産依頼が来た。なんとか対応してくれ」
あらゆる部署からの要求や期待が、すべて生産技術に集まってきます。それぞれの言い分を聞き、落としどころを探り、頭を下げ、プロジェクトを前に進めなければなりません。
この「調整業務」が、目に見えない膨大な時間的コストを生み出すのです。
同じ製造部門の中でも、課長と係長の言っていることがすれ違っており、その調整と設備仕様の確定のため、関係各所へ言質をとりご説明用の資料を作成し、認識のすり合わせをしたりもします。
予測不能な「突発イベント」の連続
どんなに完璧な計画を立てても、モノづくりの現場では常に予測不能な事態が発生します。
- 突然の設備故障
- 品質トラブルによる生産停止
- 顧客からの急な仕様変更や納期短縮
- 海外工場の応援出張
- クレームの対応
これらの「突発イベント」への対応は、ほぼす生産技術に関わってきます。他の業務を中断して、最優先で火消しに走らなければなりません。
計画的に仕事を進めようとしても、次から次へと割り込みタスクが発生する。これが、生産技術の仕事が常に時間に追われ、激務となる最後の要因です。
これらの突発イベントは、最終的に設備のせいにしやすいことが多いです。本来は、別の原因でも社長の耳に入る頃には、気づいたら設備のせいになっていたこともザラです。
【現環境で可能】生産技術の激務を回避・軽減する対策
生産技術が激務なのは構造的な問題が大きいですが、だからといって諦める必要はありません。個人の努力だけでは限界があるのも事実ですが、自分の身を守るためにできる対策は存在します。
こでは、私が実際に試して効果があった5つの方法を紹介します。
- 空白の時間を1日のスケジュールに設ける
- 仕事の「標準化」と「情報共有」で属人化をなくす
- 「断る技術」を身につける
- スキルアップで「仕事の質」を上げる
- 心と体を守るためのセルフケアを怠らない
直属の上司へ掛け合って仕組みや制度を変えてもらう働きをお願いするのが一番ですが、上司ガチャによっては対応してもらえないことも多いです。
守りのタスク管理を意識すること
「割り込み業務」をゼロにすることは不可能ですが、コントロールすることは可能です。
重要なのは、「攻めのタスク管理」ではなく「守りのタスク管理」を意識すること。つまり、予期せぬタスクから自分の時間を守ることです。
【具体的なアクション】
- タスクの可視化
タスクをリスト化し、「今これだけのタスクがあるので、新しい依頼は早くても〇日からになります」と、客観的な事実を基に交渉できる状態を作りましょう。 - バッファ時間をスケジュールに組み込む
1日に必ず1〜2時間の「空白の時間」を意図的に作ります。突発的な業務は、この時間内で処理することを原則とします。 - 「すぐやる」を捨てる
割り込み依頼が来ても、脊髄反射で「やります」と答えるのはやめましょう。「状況を確認して、いつまでにできそうか改めて回答します」と一度持ち帰る癖をつけるだけで、主導権を握ることができます。
仕事の「標準化」と「情報共有」で属人化をなくす
「自分にしかできない仕事」は、一見すると専門性が高いように思えますが、それは同時に「自分がいないと現場が回らない」というリスクと隣り合わせです。
激務から解放されるためには、「自分がいなくても回る仕組み」を作ることが不可欠です。
【具体的なアクション】
- トラブル対応記録を残す
どんな些細なトラブルでも、「発生原因」「暫定対策」「恒久対策」をフォーマット化して記録に残し、共有フォルダに保存します。これにより、誰もが一次対応できるようにしておきます。 - 作業の動画マニュアルを作成する
複雑な作業や、年に数回しか行わないような作業は、スマホで動画を撮影して簡単なマニュアルを作成します。文章で説明するよりも、はるかに早く正確に情報を伝えられます。 - 若手や他部署のメンバーを意図的に巻き込む
「この設備の担当は君に任せるから、一緒にやってみよう」と、積極的に権限移譲を進めましょう。最初は教えるコストがかかりますが、長期的にはあなたの負担を大幅に軽減してくれます。
「断る技術」を身につける
生産技術者は、責任感の強い人が多いです。しかし、その優しさが、あなたを激務に追い込んでいるのかもしれません。
すべての要求に応える必要はありません。「断る」という選択も必要です。
【具体的なアクション】
- 上司を巻き込む
「その件は、一度〇〇さん(上司)と相談させてください」と、自分一人で判断しないようにします。上司を巻き込むことで、組織として優先順位を決める文化を作ることにも繋がります。 - メールや書面で依頼させる
メールや書面で依頼させることで、重要ではない雑務の依頼ハードルを上げさせます。この依頼は上司経由でお願いします。というとなお効果が高いです。 - 代替案をセットで断る
「できません」と突き放すのではなく、「そのやり方では難しいですが、〇〇という方法なら可能です」「今すぐは無理ですが、来週まで待ってもらえるなら対応できます」と、必ず代替案を提示します。
スキルアップで「仕事の質」を上げる
同じ仕事でも、スキルが高ければ、より短い時間で、より質の高いアウトプットを出すことができます。
目先の業務に追われるだけでなく、長期的な視点で自身のスキルに投資することも、激務を抜け出すための重要な方法です。スキルアップは、今の環境を改善するだけでなく、将来のキャリアの選択肢を広げることにも直結します。
【具体的なアクション】
- データ分析スキル
Excelのピボットテーブルや関数、さらにはPythonやSQLなどを学び、勘と経験だけに頼らない、データに基づいた改善提案ができるようになると、あなたの発言力は格段に増します。「この改善で月XX時間の工数削減が見込めます」と数字で語れる人材は、どこに行っても重宝されます。 - 語学力
海外工場とのやり取りが多い職場であれば、英語や現地の言葉を学ぶことで、コミュニケーションが円滑になり、無駄な時間や手戻りを大幅に削減できます。 - 専門分野の資格取得
自分の専門分野(電気、機械、化学など)に関する資格を取得することで、専門家としての信頼性が高まり、「なんでも屋」から脱却しやすくなります。 - マネジメントスキル
プロジェクト管理やリーダーシップのスキルを磨くことで、チーム全体の生産性を上げ、結果として自分の負担を減らすことができます。
心と体を守るためのセルフケアを怠らない
最後に、最も重要なのがセルフケアです。どんなに優れたスキルやテクニックも、心と体が健康でなければ意味がありません。
【具体的なアクション】
- 睡眠時間を確保する
最低でも6時間は睡眠時間を確保しましょう。パフォーマンスが劇的に改善します。 - 定期的な運動
週に1〜2回、30分程度の軽い運動(ウォーキングなど)でも効果があります。 - 仕事と完全に切り離された時間を持つ
趣味に没頭する、家族と過ごすなど、仕事のことを一切考えない時間を意識的に作りましょう。 - 限界を感じたら専門家を頼る
社内のカウンセリングサービスや、外部の心療内科など、辛い時は一人で抱え込まずに専門家を頼ってください。それは決して弱いことではありません。
生産技術が本当につらい方は一度立ち止まることを考えてください。逃げることは、悪いことではありません。自分を守れるのは、自分だけです。
生産技術の激務が改善されない人は環境を変えるべき
ここまでで状況が改善しない、あるいは既に心身ともに限界を感じている場合。それはあなたの能力不足ではなく、会社や環境そのものが破綻している可能性が高いです。
生産技術の仕事は好きでも、「今の会社や工場があなたに合っていない」だけかもしれません。無理をして倒れる前に、環境を変える選択肢を真剣に検討してください。
ここでは、環境を変えるための3つのキャリア戦略を、段階的に紹介します。
- 社内異動で「当たり」の部署を探す
- 休職して、心と体をリセットする
- 環境を根本から変える「転職」という選択肢
社内異動で「当たり」の部署を探す
転職のようなリスクを取らずに、環境を変えられる可能性があります。
同じ会社でも、事業部や工場、上司によって、労働環境は全く異なります。「隣の部署は定時で帰っているのに、うちだけ毎日残業…」という経験はありませんか?
- 情報収集を徹底する
社内の人脈をフル活用し、各部署の残業時間や休日出勤の実態、上司の人柄などをリサーチします。 - キャリア面談で意思を伝える
上司との面談の場で、「〇〇という分野に挑戦し、会社に貢献したい」と、ポジティブな理由を添えて異動希望を伝えましょう。
休職して心と体をリセットする
もし、あなたがすでに心身の不調を感じているなら、休職も真剣に検討すべき選択肢です。
「キャリアに傷がつく」と不安に思うかもしれませんが、最も避けなければならないのは、無理して働き続けた結果、再起不能になってしまうことです。
休職期間中に心と体をリセットし、今後のキャリアを冷静に見つめ直す時間は、あなたの人生にとって非常に価値のあるものになります。
環境を変えるために転職する
「社内異動が難しい」あるいは「会社の体質そのものに問題がある」そう感じるなら、転職は有効です。
生産技術の経験者は、転職市場で高い需要があります。dodaの職種図鑑によると、生産技術の平均年収は523.8万円で、モノづくり系エンジニア平均(496.1万円)を約28万円上回っています。
あなたの持つ「現場を知る力」「課題解決能力」は、多くの企業が求めているスキルです。
重要なのは、勢いで転職するのではなく、戦略的に進めることです。
特に、初めての転職や、働きながらの転職活動では、転職エージェントの活用が効果的です。
自身の転職市場の価値を知るために、転職エージェントを登録することは重要です。
- あなたの経歴を客観的に評価し、強みを見つけてくれる
- 企業の内部情報(残業の実態、職場の雰囲気など)を教えてくれる
- 面倒な書類作成や面接日程の調整を代行してくれる
転職エージェントの利用はすべて無料です。「まずは話を聞いてみる」というスタンスで、自分に合うパートナーを見つけましょう。
複数のエージェントに登録し、担当者との相性を見ながら、信頼できるパートナーを見つけることが、転職成功の鍵です。
【まとめ】生産技術の激務から抜け出す最初の一歩は現状把握から
今回は、生産技術がなぜ激務なのか、その実態を客観的なデータと構造的な理由から解説し、ステップを踏んで段階的に解説しました。
重要なポイントをもう一度振り返ります。
データで自分の残業時間を客観的に評価する
「構造的な問題」か「自分の立ち回り」かを見極める
タスク管理、標準化、スキルアップなど、今の環境でできることから始める
それでも改善しないなら、異動・休職・転職を検討する
この記事を読んで、「自分も行動してみよう」と少しでも感じていただけたなら幸いです。
激務を抜け出すための最初の、そして最も重要な一歩は、「自分の状況を客観的に把握し、行動を起こすこと」です。
この記事が、あなたの状況を打開するための、小さなきっかけとなることを願っています。
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